ハチャトゥリアン、ドビュッシー、チャイコフスキー、ラフマニノフ…。浅田真央や安藤美姫の活躍でフィギュアスケートの人気が高まり、彼女たちが演技に用いている音楽のCDが売れ、クラシック音楽のジャンルでは驚異的な売上げを記録しているという。
クラシックに興味を持ったなら、いま南米のベネズエラで展開されている素晴らしい活動についても知っていてほしい。
それは子供たちを貧困、麻薬、犯罪から守るため、75年に始まった音楽教育システムで、ベネズエラでは3歳頃から希望者に好きな楽器が無料で貸与され、全国各地にあるオーケストラに加わり、音楽を学ぶことができるという。
最初はわずか11人の子供たちで始まった『エル・システマ』と呼ばれるこの運動は、現在90以上の児童オーケストラ、130以上の少年オーケストラ、30以上の成人プロ・オーケストラを生み出し、ベネズエラの人口約2千5百万人の1パーセントにあたる約25
万人のメンバー(主に子供たち)と、千5百人の指導者を擁する大組織に発展。音楽を通じた社会活動として、全世界から注目されている。
その頂点にあるのがシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(SBYOV)で、昨年12月の来日公演を私も聴いたが、エネルギッシュな若者たちの世界トップレベルの演奏と、素晴らしい笑顔に感動した。
が、それ以上に素晴らしいのは、『エル・システマ』が、貧困と麻薬と犯罪から子供たちを救う社会活動として現
在も継続していることだ。
音楽やスポーツなどの文化には、一部の人が楽しむだけでなく、また一時的に騒がれるだけでなく、社会全体を
より良くする「力」があるはずだ。
プロ野球もJリーグも大相撲も、さらに大学や高校のスポーツ大会も、我々の社会にどんな価値があり、何のために行われるのか、ということが考え直されるべきだろう。
それにはベネズエラの『エル・システマ』が大いに参考になるはずだ。
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