「美しい国」とは如何なるものか? ただでさえ抽象的なうえ、政局で汚れきっている輩が唱えても、その言葉を信じる人はいない。
しかし、かつて日本は、本当に美しい国だった。
幕末から明治にかけて日本を訪れた外国人たちが書き残した文章を集めた本書は、その事実をはっきりと教えてくれる。
日本の長屋に暮らした外国人が、長旅に出て帰ってみると、家の中がきれいに掃除され、衣服は洗濯され、きちんと畳んで置かれている。もちろん長屋には鍵などない。
朝早く起きる住人たちは、周囲の掃除に精を出す。老人の一人暮らしの家があれば、誰彼となく世話をする。もちろん旅に出ている外国人の住まいも。
粗末な長屋に暮らす貧しい日本人を、最初は哀れに見ていた外国人たちの眼差しは、やがてその長屋の並ぶ地域が、ゴミひとつない世界一清潔で安全な場所であることに気づく。
さらにその場所が、世界一勤勉で世界一他人を思いやる心を持つ人々によって整えられていることに気づく。
そして外国人の誰もが「この美しい国を壊してはならない」と思う。
西洋文明を追って百四十年。アメリカ文化にかぶれて六十余年。「逝きし世」をただ偲ぶのでなく、我々が真に誇るべき過去を未来へのエネルギーにしたい。現代日本人必読の一冊。 |