コラム「ノンジャンル編」
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掲載日2008-08-27

この原稿は、雑誌『自己表現』(芸術生活社)のコラム「明日への言葉」欄に書いたものです。編集部の付けたタイトルは「勉強ほど面白いものはない」でしたが、小生が付けたタイトルは「『天才』の多くなった世の中」というものでした。まぁどっちゃでもいいです(笑)。少々早いですが、“スポーツ蔵出し”に釣られて“蔵出し”します。

「天才」の多くなった世の中

 私は勉強が好きだ、と言うと、怪訝な顔をされることが少なくない。世の中の多くの人は、勉強することが、あまり好きではないらしい。
しかし、勉強ほど面白いものはない。少なくとも私は、そう確信している。だから勉強を嫌いだという人の気持ちがわからない。

 勉強をすれば、宇宙の広がりも、素粒子の不思議な動きもわかってくる。これほど胸がわくわくすることは、ほかにない。
織田信長の決断も、徳川家康の計略も、勉強しなければわからない。それほど面白い出来事を知らないままでいるのは、不幸という以上に残念で損なことである。
だから私は、シェークスピアもギリシア神話も、古事記も平家物語も、高校時代から読みまくった。今でも様々な本を読み、勉強し続けている。

 何も、自分は優等生だと自慢しているのではない。
私は、学校が大嫌いだった。一人で本を読むのは好きだが、大勢の人と一緒に机を並べて先生の話に耳を傾けるのがどうも苦手で、だから大学も入学して三か月くらいで通わなくなり、三年後には中退した。
高校生までは親の脛齧りだから、親の言うことをきいて学校へは通わなければならないと思ったが、二十歳を過ぎればもう大人だから勝手にさせてもらおうと思った。

 もちろん、その後は悲惨だった。原稿を書く仕事で食っていこうと思ったが、そんな仕事が若造に次々と舞い込むわけもなく、二〜三年間は食うや食わずの生活が続き、その後の二〜三年間もなかなか満足な収入は得られなかった。
しかし、勉強さえしていればなんとかなる、と思っていた。さまざまな知識や文章の書き方、それにいろんなものの見方を身につけさえすれば、生きていけると思っていた。

 そう確信するのに、確たる理由があったわけではない。が、出逢った人と話をして、おまえの話は面白い、と言われたり、自分の書いたものを読んでもらって、よく書けてる、と言われたりすると、それがある本に書かれてあったことの受け売りであったり、物真似であったりしても、徐々に自信もついてきて、よし、もっと勉強しようと思ったものだった。
もちろん失意のどん底に落ちたときも何度かあったが、そのときも、もっと勉強しなければ世の中には通用しないんだな、と思った。

 最近、大学で教鞭を執るようにもなり(高校以下は大学を卒業しなければ教壇に立てませんが、大学は中退者でも受け入れてくれるのです)、若い学生と接するようにもなって驚いた。彼らはあまり本を読まない。いや、あまりにも本を読まない。はっきり言って、勉強をしない。そして、悩んでいる。ガールフレンドのことで、仕事や就職のことで、自分の人生のことで……。挙句の果ては、自分探しの旅に出たい、などと言い出す。

 本も読まず、勉強もせず、ただひたすら悩んで、悩むなかからその悩みを解決しよう、などというのは、釈迦やソクラテスやキリストのような天才的偉人でなければ絶対に不可能なことだろう。だから我々凡人は、やはり先人たちの教えを知り、身につけ、それを参考にして生きてゆくほかないはずだ。

 学生たちの会話を耳にすると、なるほど「天才たちの会話」が多い。私は……と思う。俺は……と考える。僕は……ではないと思う。そんな意見がぶつかり合う。
そのテーマについては、○○は△△と書いてるけど、その□□の部分が僕には理解できなくて……といった言い回しは、なかなか耳にすることがない。

 若い頃の私は、いまの若者たちのような会話を耳にすると、不遜にもほくそ笑んだり、ホッと胸をなで下ろしたりしたものだったが、「知命」を過ぎた今となっては、なんだか日本が「天才」ばかり跋扈する社会になってきたようにも思え、少々心配にも思えてくるのである。

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親父の隠したエロ小説

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二十五時――わたしの好きな世界文学

「私の京都」

わたしの東京体験

SPレコードは生演奏と同じ〜蓄音機にはまってしまった!

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内面より外面

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