コラム「ノンジャンル編」
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掲載日2017-04-21
この原稿は、『アサヒ芸能』の連載コラム『NIPPONスポーツ内憂内患 第114回』に書いたものです。この連載は“蔵出し”をしないことを宣言し、過去に(たしか)一度しかホームページに登場させたことがありませんでした。が、この銃剣道(!)の話題は、少しでも多くの人にしてもらいたいと思い、特別に“蔵出し”することにしました。また話題が、スポーツに限ったことでもないので、“ノンジャンル"のコーナーに"蔵出し”することにしました。競技人口が少なく、文科省も最初は除外していた銃剣道を、中学生の体育(武道)の授業に持ち込む…というのは、自衛隊出身の国会議員が強く運動した結果とも言われています。皆さんに、この問題を知ってもらい、考えてもらいたいと思い、少々手を加えて"蔵出し”することにします。

銃剣道はスポーツか? そのうちに、まさか竹槍も?

 3月31日、文部科学省は4年後の2021年から実施する新学習指導要領を発表。中学校で教える武道なかに銃剣道を含める決定をした。

 これは、はっきり言って軍国主義的精神論への回帰を求める政治的策動以外の何者でもあるまい。

 そもそも銃剣道とは戦争の白兵戦から生まれた戦い(殺し合い)。それを「スポーツ競技化」したものらしいが、歩兵の持つライフル銃の先に短刀を装着(着剣)し、それで敵の歩兵と刺し合う技(喉や胴への突き技)を競うのだ。

「スポーツ競技化」した銃剣道では、ライフル銃の形をした木の先にゴムの付いている「木銃」を用い、剣道と同様の面や胴や小手などの防具を身につけて行う。

 その形状は相当にリアルな戦闘を思わせ(人殺しの道具を操っているように見え)、何故このような「武道」を中学生にやらせなければならないのか、まったく理解できない。

 11年前(2006年)に教育基本法の「改正」が行われ、安倍政権が「美しい日本」に対する「愛国心」を強調。「日本の伝統と文化を尊重する」教育が唱えられ、中学1、2年生の体育で武道が必修化された。

 そのときは、柔道、剣道、相撲のなかからの選択だったが、今回の新学習指導要領で、空手、長刀、弓道、合気道、少林寺拳法を追加。銃剣道は、競技者数が少なく、実施率が低いという理由から、最初は追加種目に入っていなかった。が、文科省が行政手続法に則ってパブリックコメント(パブコメ=意見公募制度)を募った結果、日本武道競技会に参加している団体のなかで銃剣道だけが落ちているのはオカシイという声が多く寄せられ、その結果、銃剣道も加えられたという。

 東京新聞特報部の4月5日付の記事によれば、全日本銃剣道連盟は会員数(競技人口)約3万人、その9割は自衛官らしい。また国民体育大会で《実施される年とされない年があり、各地で「自衛隊の戦技だ」と反対運動も起きていたが、今年3月、「毎年実施競技」に決まった》という。

 じつは小生の父親は旧帝国陸軍軍曹で、3度の応召の末、終戦は上海付近で迎えたが、「最前線で着剣命令が出たときは怖くて身体が震えた」と語っていた。

 また1958年に放送されたテレビドラマ『私は貝になりたい』では、戦時中の米軍捕虜を銃剣で刺し殺すよう命令された床屋の男(フランキー堺)が、怖くて刺せず、ケガをさせただけに留まったにも関わらず、戦後BC級戦犯として逮捕され、死刑を宣告されるという悲劇が描かれた。このドラマは、94年には所ジョージ主演でリメイクされ、08年には中居正広主演で劇場版も作られた。

 そのような「銃剣」と「戦争」の関係のリアルな記憶が、けっして少なくない人々の脳裏にまだ鮮明に残る「人殺しの技」を、はたして柔道や剣道と並ぶ武道(スポーツ)として、子供たちに(中学生男子に)やらせていいものだろうか?

 我が父親は今はもう10年前に他界したが、足と肩に貫通銃創を負い、顔面の目の下に手榴弾の破片を入れたまま一生を送った。そんな彼が生きていたなら、銃剣道の中学生への広がりはもちろん、着剣戦闘のスポーツ化にも大反対しただろう。

 格闘技は、ボクシングもレスリングも、柔道も剣道もフェンシングも、元はと言えば人を傷つける暴力(殺人)行為でもあった。それがスポーツ化されたのは、議会制民主主義という暴力を排除し、話し合いで物事を決める「非暴力社会」の成立があったからだ(だから民主主義の発達しなかった時代の国や地域では、いくら経済的に潤っても、スポーツという文化を生み出すことはできなかった)。

 暴力が不要となり、ゲーム化したのが格闘技というスポーツだが、銃剣道はまだスポーツには見えず、実戦のための訓練に見える。そんなところが怖い……と思うのは小生だけではないだろう。アベさん!まさか竹槍まで持たせるような社会にする気ではないでしょうねえ……?

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