5月1日に小生が編纂した『スポーツ・アンソロジー 彼らの奇蹟』(新潮文庫)が出版された。
この「選集(アンソロジー)」は新潮文庫百周年記念として作ったもので、小説以外のジャンルで……、格闘技と野球を除き(それらは別の文庫として作られる予定だとか)……という出版社の条件に従って編集させていただいた。
その結果、ノンフィクション評論が集まるのは当然とはいえ、それだけでは面白くないと思ったので、小生はまず吉田兼好の『徒然草』から「五月五日賀茂の競べ馬」を選んだ(競馬はスポーツですからね)。
続いて澁澤龍彦の平安時代の蹴鞠に関する文章、ドイツ人哲学者オイゲン・ヘリゲルの日本の弓術(武道)に関する文章(体験記)を選んだ。
さらに小林秀雄と三島由紀夫のスポーツ論、大江健三郎、杉本苑子、有吉佐和子の1964年東京五輪観戦記、虫明亜呂無の女性スポーツ(人見絹江)論、石原慎太郎のヨット・レース体験記(それは暴風雨に巻き込まれて死者まで出た苛酷なレースだった)、開高健のアマゾンでの釣りのエッセイ、村上春樹のランニング論……等々、常日頃スポーツ雑誌に親しんでる読者が、あまり目にすることがない(と思われる)スポーツに関する素晴らしい文章を集めた。
もちろんスポーツ・ノンフィクションの大御所である佐瀬稔の登山論、沢木耕太郎のマラソン論、山際淳司のボートに挑んだ男のノンフィクション、後藤健生のサッカー論も含め、比較的若い作家である宇都宮徹壱の欧州サッカー論、中村計の現代ゴルファー論等も選んだ。そして僭越ながら、編者(小生)のラグビー論も加えておいた。
その結果、合計19人の作家による作品を集めたのだが、驚いたことに、そのうち過半数の11が、意図しないまま「死」と関係ある作品になってしまった。
「生」を謳歌するはずのスポーツも、窮極に至ると、「死」の領域に触れるものなのか?
私自身、これは新しい発見だった。少々我田引水になったが、是非とも御一読下さい。 |