〈人類は4年に一度夢を見る〉
これは、市川崑監督の記録映画『東京オリンピック』の冒頭に出てくる言葉である。
いい言葉だ。シドニー五輪が開幕して、改めて、この言葉の意味を噛みしめることができた。オリンピックは、ほんとうに素晴らしい。
が、少々残念なこともあった。というのは、日本人のなかに、オリンピックの意味を誤解している人がいるのではないか、と思えることがあったからだ。
その筆頭は、開会式の入場行進で、日本人選手団がまとっていた「虹色のマント」である。あれは、いったい何だったのか?
同性愛のシンボル云々…は、どうでもいい。デザインの劣悪さも好き嫌いの問題だと反論する人もいるだろうから、さておくとして、あれがNIPPONなのか? 日本の文化といえるのか?
虹色が美しいとか、「環境問題」と「オーストラリアでの開催を意識した色」などという「説明」など理屈にならない。
オリンピックとは、あらゆる国々、あらゆる民族、あらゆる文化が、出逢い、交流する祭典である。ナショナルな文化が一つになってインターナショナルになる場である。
そんな場所で、日本文化とはまったく無縁で、日本人にまったく似合わない服装と色をまとって、何になる?
アフリカ諸国やカリブ諸国、オセアニア諸国やアジア諸国の見事な民族衣装、ヨーロッパ諸国のカラフルな色彩に対して、日本は、ワケのわからない国、ワケのわからない民族になってしまった。
あの「マント」の採用を決定した人物(JOC関係者)は、オリンピックという祭典の意味と、日本の文化を理解していない人物として、また、日本の文化を世界に誤解させた人物として、責任をとって辞任すべきだろう。
もう一人、オリンピックという人類の祭典を理解していなかった人物は、読売ジャイアンツのオーナーの渡邊恒雄氏である。
韓国と北朝鮮が南北統一旗を掲げて入場行進をする、というような意義ある祭典に出場することよりも、ジャイアンツの興行的利益を優先し、プロ選手の出場を断固として拒んだ姿勢は、完全な誤りであることが明白になった。
そのような人物が、野球組織のプロ・アマ統合に背を向け、プロ野球界全体に権勢をふるい、ひたすらジャイアンツの勝利(親会社の利益)ばかりを追求しているのは、日本の野球界の利益にならないばかりか、日本という国の国際的地位を貶める行為というほかない。
オリンピックは、いろいろ問題はあるが、やはり「4年に1度の人類の祭典」なのだ。その意味を認識しない人物は、スポーツ界に存在するべきではないのだ。 |