バレーボール会場だけ決まらず、結局「大山鳴動してネズミ一匹」が出るか出ないかも先送りのような結果となった。だが、今回の騒動で大幅な建設経費の削減が可能になったことを思えば、小池都知事の問題提起も無駄ではなかった。
また、会場移転はならなかったが「復興五輪」を強調して宮城県長沼ボート場での開催を検討し、結果的に事前合宿地として国際オリンピック委員会(IOC)のお墨付きを得たのは、野球・ソフトボールの福島県開催とともに、「復興」を世界にアピールする意味では悪くない結果とも言える。
ただ、小池知事は経費削減を主眼とするあまり、周囲にスポーツを熟知する人物を欠いたのではないか。この結果、競技団体の支持を得られなかったのは、物事の進め方として評価しづらい(組織委も、スポーツを熟知したうえで会場選定を進めたとは言い難いのだが)。
水泳関係者は既存の辰巳国際水泳場の水深などが国際基準に合わないと、新設会場を強く希望。ボート関係者も、1964年東京五輪の遺産である戸田ボート場が国際基準に合わず、狭くて練習にも不自由なことを主張。今回結論は持ち越しとなったが、有明アリーナの建設はバレーボールの他にもバスケットボールなどの各室内球技団体が建設を望み、4者協議の場で日本オリンピック委員会(JOC)の竹田会長が、スケートにも利用できる競技場が必要と言われてきたと発言した。
それら大規模なスポーツ施設の必要性は本来、国がスポーツ行政の中で手を打つべき問題である。それが十分でなかったから、各競技団体は東京五輪という「チャンス」を利用して新しい施設を手に入れようとしたのだ。だが、その結果、東京都は五輪終了後に億単位の膨大な年間施設維持費を抱え込むことになる。
ならば米国の多くの都市が税金で建てた巨大な体育館の運営と維持管理をプロバスケットボール(NBA)のチームや民間会社に委ねているように、東京都が造る施設も運営は民間に託してもいい。一方で赤字でも都が税金で支援する監理団体にしておけば、都職員の「天下り先」確保になるとの皮肉な声も聞く。
さまざまな思惑の渦巻く五輪予算は、総額を2兆円以内に抑える努力をすることでは4者協議で一致したが、その内訳は示されなかった。
今回の3会場以外にも東京都が新設する会場整備費のコスト見直しは手つかずのままだ。それ以上に、組織委の決めた会場の中にも、ゴルフのように、会員制の高級クラブのため一般の人は通常利用できず、日曜は原則女性がプレーできない施設もある。一般に開放されない施設では、五輪のレガシー(遺産)としての価値に疑問が残るし、性差別に反対する五輪精神にも合致するとは言い難い。
五輪準備の主体となる都と組織委の角逐の末、IOCが調停役的に4者協議を設けて乗り出しただけでも恥ずべき事態だが、問題はまだ山積している。現在の状態のまま2020年東京大会は成功裏に開催できるのか、不安は消えない。 |