ダンサー、女優、映画監督としての成功以上に、ナチスの協力者、ヒトラーの恋人として虚名を馳せたリーフェンシュタール(本当はゲーリングの恋人だったらしい)は、百歳になった今日も、水中カメラマンとして、地中海の海底などを撮影し、驚くべき活躍を続けている。
そんな「強靱な意志」の持ち主は、自らの人生までも創造(捏造?)する。
そこで著者のローターは、インタビューを放棄し、膨大な資料と彼女の作品を丹念に読みかつ見ることだけによって、「天才芸術家の一生」という「作品」を、見事に描き出した。
彼女の作品の「様式美」を高く評価しながらも、「アンビヴァレンツ(引用者註=カッコ内は以下同=二律背反)ともコントラディクション(矛盾)とも無縁」で「日常的なものにも風変わりなものにも興味を抱かな」い作品は、「イロニー(皮肉)ともフモール(ユーモア)とも関係がな」く、「省察的なものを回避しているがゆえに、潜在的に生気に乏しい」と犀利な分析を展開し、彼女は、ただただ「観客を誘惑したかった」と結論づける。
著者が断言はしてないが、本書は「女の一生」という「悲哀」を描いた一冊と言えるだろう。 |