京都とスポーツ――というのは、どうもイメージ的に結びつきにくい。
京都といえば「雅(みやび)」の文化。「文武」で分ければ「文」のほう。「公武」で分ければ「公(公家)」のほう。「益荒男(ますらお)ぶり」よりも「手弱女(たおやめ)ぶり」のほうがイメージ的に合う。
強靱な肉体を駆使して、スーパーマン的な身体能力を発揮するマッチョ系のスポーツの世界は、あまり似合わない。
しかし、京都出身の一流スポーツマンは大勢いる。プロ野球草創期のジャイアンツの大エース沢村栄治。メキシコ五輪銅メダルで日本サッカー史上最高のストライカー釜本邦茂。
王貞治と肩を並べる大ホームラン打者で現在も知将として活躍する野村克也。プロ野球史上最高の遊撃手で85年のタイガース・フィーバーを率いた吉田義男。連続試合出場記録で国民栄誉賞を授与され米大リーグからも表彰された衣笠祥雄。ラグビーの神戸製鋼スティーラーズを7連覇に導いた平尾誠二。バルセロナ五輪シンクロ銅メダルの奥野史子……。
他にももっと素晴らしい活躍をしたアスリートがおられるだろうが、思いつくだけでも次々と名前が出てくる。が、こうして名前を眺めてみると、やっぱり京都人だな……と思うのは、私だけだろうか?
どういうタイプを京都人というかは、かなり難しい問題だが、たとえば、こんなことがあった。
神戸製鋼ラグビー部が勝ち進んでいた頃、ある女子アナウンサーが平尾キャプテンに次のような質問をした。
「今年も優勝できるでしょうか?」
そのときの平尾キャプテンの答えを、発音通り、言葉通りに書くと、次のようなものだった。
「えらいはっきりきかはりまんなあ。答えにくいことやけど、でけるんとちゃうのんかなぁ……」
その言葉をそばで聞いた私は、「今年はすごい自信だな……」と心の中でうなった。が、女子アナはちんぷんかんぷんだったようで、改めて私に向かって疑問をぶつけてきた。
「今の言葉は、優勝できるだろうという意味ですか? それとも、できないだろうという意味ですか? どっちなんです?」
そこで私は、こう答えた。
「でけるいうこととちゃうのんかいなぁ……」
女子アナは、まだ首を傾げていたが、非京都人にとっては、京都の言葉はなかなか理解が難しいらしい。
京都人は奥ゆかしいのか、少々ずるいのか、とにかく言葉を断定的にはつかわない。そのかわり、けっこう多弁で理屈を並べる。そういえば(沢村は知らないが)先に並べた京都出身のスポーツマンは、誰もがただ競技に邁進しただけでなく、一家言お持ちの方々ばかり……といっても失礼ではないだろう。 |