コラム「ノンジャンル編」
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掲載日2008-03-19

今回の“蔵出し”原稿も、前回につづき、生前の野村万之丞さんと酒を飲んだときに、狂言を現代女性が演じられるように書き換えたらどうなるか…という話になり、挑戦してみたものです。前回は『茶壺』でしたが、今回は『二人袴』です。万之丞が亡くなった直後に実際に「女人狂言」として上演されたときは(春風ひとみ演出・女性楽劇集団『さくや』公演04年6月)、小生の書いたものとは少々異なるものになってしまいましたが、それはそれで素晴らしく面白い舞台でした。こういう仕事を、またしてみたいなぁ(笑)。

<二人袴>

娘=嫁(あくら)と、その母親が、近々嫁入りをする家(姑宅)を訪れる。
世間知らずの娘(嫁)。母親は娘と姉妹に見えることが自慢。
ふたりとも、タンクトップにロウ・ウエストのホワイト・ジーンズ(またはスパッツ)というヘソ出しファッションで、「スカートというものを履いたことがない」。

 「彼んちへ挨拶に行って、新しいママに会うんだけど、ラッキーって結果にしたいわけ。でも、どうするかわかんないから、ママ、教えてよ」

 「まあまあ、もう、あくらちゃんは何も知らないんだから。やっぱりきちんと挨拶をするんだったら、やっぱしスカートくらいは履いていかないとダメじゃん。ママが若いときにジルバを踊ったスカートがあるから、それを貸してあげるわ」

 「うわっ。かっこいいジャン。ママ、けっこうやるじゃん」

 「そりゃ、わたしだって、昔はけっこう……」

 「でも、スカート、一枚しかないじゃん」

 「そうね。でも、しかたないから、一枚でなんとかしちゃいましょ」

というわけで、嫁(娘)がホワイトジーンズ(スパッツ)の上からスカートを履き、姑宅へ挨拶に行く。

その後の展開は、狂言「二人袴」とまったく同じ。
スカートが一枚しかないものだから、まず娘がスカートを履いて挨拶に伺い、母親が呼ばれると、娘が退室し、スカートを脱ぎ、それを母親が履く。

その何度かの繰り返しのあと、最後に、二人揃って挨拶に行くときは、スカートを二つに切り裂き、前掛けのようにして姑宅へはいる。
…と、姑は、バドワイザーとカリフォルニア・ワインを出し、自分が、かつてマハラジャのお立ち台で踊っていたことを告白する。そこで……、

 「3人で踊りましょう」

 「パラパラならば踊れます」

姑と母 「パラパラならば私たちも」

と、3人で踊り出す。

 今は昔のマハラジャは 踊り三昧お立ち台
夜から朝まで行く春の 時を忘れていつの世も
踊る若さよ めでたけれ

 ジルバにルンバ マンボにチャチャチャ
ドドンパ、ツイスト、サーフィン、モンキー、
扇振り振り腰振りも 腕を振り振りパラパラも
念仏踊りと変わりなし 盆の踊りと変わりなし

 アラブの皇子もトルコの姫も 天竺の神もジャワの仏も
へそ出しルックで舞い踊り ミニスカパンツで歌い舞い
今も昔も 西も東も 夢もうつつも 溶けてゆく

踊ってる最中に、スカートの後ろ半分がないのを発見した姑は

 「それって、新しいトレンド?」

母と娘 「恥ずかしや、恥ずかしや」

 「それって、ニューヨーク? パリ? ミラノ? どこのファッション? どこのお店で買えるの?」

母と娘 「恥ずかしや、恥ずかしや」

 「どこで買えるの? 教えて、教えて」

母と娘 「恥ずかしや、恥ずかしや」

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<二人袴>

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読書日記〜稲垣足穂から梅原猛まで

アッピア街道に乾杯(ブリンディシ)!

「質より量」の読書は「質」が残る?

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権力志向者がジャーナリストになる危険性――魚住昭『渡邉恒雄 メディアと権力』講談社

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野村万之丞 ラジカルな伝統継承者(2)

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