「なんか、感覚がちがう。力の入りようが、ちがうねん。正直言うて、自分でも不思議な感覚。こんなに力を入れるもんかと、自分でもびっくりしてる。やっぱり、自分のオーケストラ、自分の子供たちと思うと、全然感覚が違ってくるんやね……」
佐渡裕さんに、PACオーケストラが生まれて最初のコンサートのための練習が始まった頃、「どんな感じ?」と訊いたら、そんな答えが返ってきた。
「他のオーケストラを指揮するときに、手を抜いてるわけやないけどね」と、苦笑いを加えながら。
10年前の話なのに、このときの佐渡さんの上気した顔つきは、今もよく憶えている。
素晴らしい演奏、心を揺さぶる演奏を、言葉で表すのは難しい。が、PACオケの演奏を聴くと、いつも「音」が背筋を伸ばして、こちらに向かってくるように感じる。
真面目に、一生懸命、「音」が前進して、迫ってくる。だから客席に座った私も、そうそう、頑張れ……と、力を入れて応援したくなる。
きっと佐渡さんが自分の子供たちを手塩にかけて、力を入れて育てた結果だろう。が、先日(2月21日)下野竜也さんの指揮でドヴォルザークを聴いたときも、「音」は背筋をぴんと立て、一生懸命前進して迫ってきた。
下野さんの見事な棒さばきに加えて、これが「入団時35歳以下、在籍期間最長3年」というルールを持つオーケストラの「若さ」の魅力というものなのだろう。 |