コラム「音楽編」
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掲載日2011-01-26
この原稿は、1月15日東京オペラ・シティのコンサートホール「タケミツ・メモリアル」で行われた『山下洋輔プロデュース ニューイヤー・ジャズコンサート2011』のパンフレットに書いたものです。天才的アレンジャーの挟間美帆は洋輔さんにコレを読まされて山下洋輔作曲「幻燈辻馬車」を編曲したとか。ちょいと恐縮。文章はもちろん岡本喜八監督で撮影される予定だった映画「幻燈辻馬車」のシナリオのパロディ。毎年新春恒例の“蔵出し”です。

特報!! 撮影快調! 完成間近!! 公開迫る!
映画『幻の幻燈辻馬車』の『遊び場』
  原作:山田フー太郎 脚本:高野カズ明
  監督:岡本キ八  音楽:山下ヨースケ
  製作:雲の上キネマ・賽の河原プロ

干兵衛
「雛(ひな)! 父(とと)を呼べ! 祖母(ばば)もじゃ!」
「父(とと)! 助けて! 父! 祖母(ばば)! 祖母!」
(雛を襲った自由党員と帝政党員が、怪訝そうに背後を振り返ると、クビから血を吹き出した男女がしなだれかかる。両人「ううわあ! 出たあ!」と悲鳴をあげて失神)
干兵衛
「……いつも、すまんのう」
蔵太郎
「いえ。ドロドロと出て来るだけですから」
お宵
「だいぶ堂に入ってきたろ?」
 と、両手を垂らして幽霊のポーズ。
干兵衛
「本物の迫力じゃ。ははは……」
カントク
「カアアーット! 撮りなおーし!」
助カン
「ええーっ? 撮り直しですかぁ?」
カントク
「スモーク、焚きすぎぃ! 誰がやったんだぁ?!」
助カン
「それ、仕方ないんですよ、コッチでは。どっからともなく煙っちゃうんです」
カントク
「まったく…。じゃあ、馬車のなかにシーン変更。なかまでは煙も入らんだろ」
助カン
「シーン24でーす。干兵衛さん、お宵さん、馬車のなかにお願いしまーす。雛ちゃーん。馬車の座席に寝てくださーい。照明さんイイですかあ。キャメラさんは…イイですね。イイですねえ。カントク、どうぞ」
カントク
「……ヨーイ! スタート!」
干兵衛
「……して、人は何のために生きておる?」
お宵
「もうすぐ、あんたにも分かるわ」
干兵衛
「もうすぐ?……いや、私はまだ死ねん。雛が一人前になるまでは……」
お宵
「(微笑んで)分かってるじゃないのさ」
干兵衛
「?」
お宵
「何のために生きてるか」
干兵衛
「……(雛に目をやる)」
カントク
「カアアアーット!」
助カン
「またですかぁー!? 早く進めましょうよ。人力俥チェイスの撮影もまだだし…。今回の作品はコッチの世界で前評判抜群ですからね。公開を遅らさないよう……」
カントク
「キミ……、原作は読んだかね?」
助カン
「え? ええ! もちろん! 山田フー太郎先生の明治モノの大傑作! 先生もコッチでの映画化を喜んで、快く友情出演を……」
カントク
「そりゃ僕だって嬉しい。けど、コッチの世界には他にもいっぱいいるんだぜ」
助カン
「ええーっ?」
カントク
「映画に出てくる明治の有名人は、今のところ怪談噺の三遊亭圓朝くらいだ。しかし原作の『幻燈辻馬車』には……」
助カン
「あ! 政治家だけでも、伊藤博文、板垣退助、後藤新平、大山巌、中江兆民、徳富蘇峰……」
カントク
「政治家から名前を出したのは気に入らんな。けど、みんな、ホンモノの面子が揃ってる」
助カン
「はい。森鴎外、田山花袋、坪内逍遙……。柔道の嘉納治五郎も。芸人芸妓では川上音二郎と貞奴、西洋奇術の松旭斎天一。それに殺人事件を起こして「好いた惚れたと大川の水に流した色の数、花がいつしか命とり」と歌われた明治随一の毒婦・花井のお梅……」
カントク
「その全員がコッチの世界には、雁首並べて揃ってる。なのに出演が圓朝ひとりとは、もったいないような寂しいような……」
助カン
「しかし、その豪華絢爛奇想天外花形明治有名人総出演の筋書を整理して、祖父と孫の見事な人情家庭劇が生まれたわけで……」
カントク
「そのとおり。とはいえコッチに来てみれば、本物のキャストが使い放題。そんな贅沢、アッチじゃ想像もできなかったから……」
助カン
「けど、豪華キャストを全員繰り出すと、『ジャズ大名』のドタバタ・ラストシーンに似て来やしませんか」
カントク
「しかしコッチのみんなが思いっきり暴れまくる『遊び場(プレイゾーン)』のようなシーンもほしいから、いっそ脚本を書き直そうか……」
「おおっと、早まっちゃいけねえ」
カントク・助カン
「誰だ、貴様は?」
助六
「忘れないで下さいよ。仇討に限らず困ってる御仁を見つけりゃ助けの手を伸ばす。『助太刀屋助六』ッたあ、俺のこった。あんたが創って下すったキャラじゃないスか」
カントク
「キミはまだまだアッチの世界の……」
助六
「堅いことは言いっこなし。今夜はチイッと面白い話を持ってきたんスが、アッチの世界でこれから、カントクの作品にまつわるコンサートが開かれるんですぜ…」
カントク
「ナニッ! それは本当か?」
助六
「おいら一人の殺陣にフリージャズをくっつけたヨースケって野郎や、おいらのバックでドンドコ太鼓を叩いたエイテツって野郎なんかが、『遊び場(プレイゾーン)』で暴れまくるとか……」
カントク
「何ぃ! それは見逃せ……いや、聴き逃せん。みんな! 下界へ飛ぶぞ!」
幽界スタッフ・
キャスト全員
「オオーッ!」
助カン
「ちょっ、ちょっと。コンサートは満員札止め。チケットは余ってないそうです」
カントク
「はははは。わしらは、どこへでも入り込める。客の背中、肘掛けの隙間、椅子の下、通路の脇、天井にも飛んで…あらゆる場所が、超満員のわしらで盛りあがるぞぉ」
助カン
「せっかくですから、今夜のコンサートの音は、完成したときの映画『幻の幻燈辻馬車』のバックに使いましょうか」
カントク
「それはイイ。史上初のアッチコッチ合作映画だ! ナマレコの準備は……できてる? よーし! ホンバン、ヨーイ、スタート!」

(註)台詞の一部は、角川書店編集部・編『列外の奇才 山田風太郎』角川書店・刊に掲載された脚本『幻燈辻馬車』(第二稿/脚本・高野和明)を参考にさせていただきました。

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特報!! 撮影快調! 完成間近!! 公開迫る!映画『幻の幻燈辻馬車』の『遊び場』

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メジャー級のプレイと音楽

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玉木正之の『続々オペラ超入門講座〜オペラを心ゆくまで楽しみましょう!〜』第1期「オペラのツボ」

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ベートーヴェンと『神』と『人々』は、どんな三角形を形づくるのか?

天才バーンスタインが残した『キャンディード』もう一つの大傑作

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紫色の音にして 追悼・浅川マキ、唄い続けた生涯

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オペラ『忠臣蔵外伝』 作曲/三枝成彰 脚本/島田雅彦 再構成/玉木正之

マリオ・デル・モナコは長嶋茂雄である

ドラマチックに、そして、優しく……――大岩千穂さんの歌心

ダフ屋の矜恃

スポーツは音楽とともに

玉木正之の『クラシック音楽道場入門』 第1期「クラシックはオモシロイ〜その楽しみ方」

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『ウェスト・サイド・ストーリー』は最高のオペラ?

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純文学書き下ろし序曲『のだめのためのだめな虚無舞踏序曲(ダンシング・ヴァニティ・オヴァチュア)』

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真のオペラの誕生と成長

「身体の音楽」――太鼓打ち・林英哲さんに関する断想

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玉木正之の『オペラはやっぱりオモロイでぇ』 第15期「オペラで世界文学全集!」

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クラシック音楽ファン、オペラ・ファンは、なぜDVDに狂喜しているのか?

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クラシック・コンサートは「真に新しい音楽」に触れる場所

オペラとは男と女の化かし合いを楽しむもの

50歳からのホンモノ道楽

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山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート ヨースケ&サド緊急“生”記者会見!『いま明かされる!反則肘打ち事件の真相』

「ベートーヴェンの交響曲」その名声と誤解

ベートーヴェンの「圧倒的感動」

ファジル・サイの魅力

スポーツは音楽とともに――フィギュアスケートはオペラとともに

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東方の奇蹟の二重唱

永遠の歌声

「原点回帰」の「山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート2006」に贈る新春お笑い寄席 新作古典落語『人生振出双六』

20世紀最高の「歌役者」

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タイムマシンと冷戦時代

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ビートルズはわかる?

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クレオ・レーンの学歴

ひばりの川流れ

NASAと蓄音機

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「革命的音楽」は時代とともに消えてゆく?

究極のノスタルジー

『プロの仕事』

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討ち入りや ゑひもせすまで ジャズに酔ひ――『ジャズマン忠臣蔵』講釈・前口上

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モーツァルトのオペラのおもしろさ

人を愛し、未来を信じ、時代を超越するパワー

バーンスタイン『キャンディード』の単純明快な世界

いつの世も変わらない「親子」と「男女」

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