スポーツとクラシック音楽は、サッカーの応援歌(ヴェルディのオペラ『アイーダ』の「凱旋行進曲」)をはじめ、きわめて親密な関係にある。
なかでもフィギュア・スケートのバックに使われる音楽には、クラシックが多い。
4月で幕を閉じる2012〜13年のシーズンは、高橋大輔がショート・プログラムにベートーヴェンのピアノ・ソナタ『月光』を使い、フリー・プログラムがレオンカヴァッロのイタリア・オペラ『道化師』。
浅田真央はショート・プログラムがガーシュインのジャズの名曲『アイ・ガット・リズム』だったが、メインはチャイコフスキーの『白鳥の湖』だった。
とくに浅田真央は、毎年ハチャトゥリアンの組曲『仮面舞踏会』の「ワルツ」や、ラフマニノフの詩曲『鐘』、さらにシュニトケのオペラ『愚者との生活』のなかに登場する「タンゴ」といった珍しいクラシックの面白い楽曲を使い(当時コーチだったタラソワさんが選曲したらしい)、クラシック・ファンを大いに楽しませくれた。
グリーグの『ピアノ協奏曲』で世界王者になった安藤美姫は、エキジビジョンでモーツァルトの『レクイエム』を使ったが、フィギュア・スケートでよく使われるクラシックと言えば、ストラヴィンスキーの『火の鳥』、ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』、リストの『愛の夢』、ドビュッシーの『月の光』などが有名。
オペラなら、ヨハン・シュトラウスの『こうもり』(鈴木明子やキム・ヨナが使った)、ヴェルディの『椿姫』、プッチーニの『トスカ』、『ラ・ボエーム』(今シーズンはカナダのパトリック・チャンが使った)などが、よく使われている。
日本で最も有名になった音楽(オペラ)といえば、『トゥーランドット』。
中国のコワ〜イお姫様が、異国の王子との愛に目覚め、氷のように冷たかった心が徐々に優しく暖かくなってゆく姿を、プッチーニの華麗なメロディをバックに、荒川静香さんが見事なイナバウアーとともに表現。
06年のトリノ冬季オリンピックで金メダルを獲得したときの美しい姿は、今も多くの人々の記憶に焼き付いているに違いない。
フィギュア・スケートのファンから、クラシック音楽やオペラのファンになった人も、きっと多いことだろう。 |