コラム「音楽編」
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掲載日2011-06-29
この原稿は、かつて存在した(今は廃刊になった)隔月刊誌『大人ぴあ』の連載コラム「玉木正之のちょっとオモロイモン」の第5回と第6回(2000年11月号&12月号)に書いたものです。最近『ぴあ』も廃刊になったとかで、記念に(第16回まで)順次“蔵出し”していく予定です。

『大人ぴあ』連載「玉木正之のちょっとオモロイモン」
第5回 天才・筒美京平の歌謡曲は消えてゆくから美しい?

 あるTV番組で、CDやLDの寿命は20〜30年しかない、というキョーレツな「事実」を報じていた。収められたデジタル信号は半永久だが、CD盤やLD盤のコーティングが劣化し、「針跳び」を起こすようになり、いずれはプレイヤーにかけられなくなり、音も聴けなければ、画像も見られなくなるというのだ。

 CD、LDだけではない。MDもDVDもFD(フロッピー・ディスク)も同様。デジタル信号蓄積装置は同じ運命にあり、NASA(アメリカ航空宇宙局)では火星の写真の20が既に「取り出し不可能」だという。

 デジタル信号を入れた「盤」が劣化する前に、バックアップを取り続ける以外、情報を残す方法はない。が、我が家にある約千枚のCD、300枚のLDの複製を取ることなど不可能。

 自分が死んだら母校の図書館に寄付しようかと思っていたが、どうやら、それらはゴミクズ以外の何物でもなくなるのだ。

 トホホ……というより、笑っちゃう話ではないか!
  何が最新のデジタル技術だ!

 SPやLPのレコードなら、少々古くなって雑音に悩まされながらでも音は聴くことができる。歌の良し悪し、演奏の良し悪しも判断することもできる。が、最新デジタル技術はどんなに丁寧に扱っても、いずれは屑にしかならないのだ。

 一万年後の人類が、過去の文明を発掘すれば、現代文明は大量の粉末のゴミでしかないという。上質の紙に残された字や絵がかろうじて判読でき、はっきり残るのは石に刻まれた古代メソポタミアの楔形文字や古代エジプトの象形文字だけだともいう。

 何というナンセンス!  
 ワハハハハハ……と呵々大笑するほかない。

 いま、友人から、限定発売のCD8枚組全2巻『筒美京平全集』を借りて愛聴している。「ブルー・ライト・ヨコハマ」「バラ色の雲」「また逢う日まで」「さらば恋人」「くれないホテル」「真夏の出来事」「さいはて慕情」「雨のエアポート」「恋の十字路」「サザエさん」「雨がやんだら」「雨の日のブルース」「私の彼は左きき」「木綿のハンカチーフ」「17才」「東京ららばい」「魅せられて」……。どれも素晴らしい!

 日本の歌謡曲の最高峰といえる名曲ばかり!それらがすべて、消えてゆくかと思うと、よけいに素晴らしく思える……。消えてゆくから美しい――。それは、真理と言えるかもしれない。


第6回 イタリアのド演歌歌手フィリッパ・ジョルダーノ

 ありゃ、何だ? シドニー五輪日本選手団の虹色マント。美醜は問わない。あれは断じてNIPPONではない。日本の文化ではない。

 環境問題を訴えただと? 虹色はゲイ・パレードのシンボルだともいわれた。ゲイが悪いとはいわない。が、インター・ナショナルな文化なんて存在しない。ナショナルな文化が多様に共存することがインター・ナショナルなはずだ。なのに、嗚呼、恥ずかしい。

 あんなマントなら合羽からげて三度笠のほうが、まだマシ。今後は、女子選手は矢絣袴、男子選手は紋付き袴にしては?

 五輪期間中に来日していたミラノ・スカラ座の公演に足を運んだが、やはりイタリア臭がプンプンと匂った。ボローニャ歌劇場ほど強烈ではなく、スカラはインター・ナショナルに洗練されていた。

 が、それでも、オリーヴ・オイルとアリオの香が匂い立ち、「イタリア・オペラ」とは「ド演歌オペラ」であることを思い知らされた。

 同じ時期、来日していたフィリッパ・ジョルダーノに逢った。予想通りコテコテのイタリアーナ。

 “Buon giorno, Principessa!”と挨拶すると、ロベルト・ベニーニの“La vita e bella”(Life is beautiful)のヒロインのようにニッコリ笑って"Grazie"と答えてくれました!

 あとは、美味しいペペロンチーノの作り方やローマのgiocatore(サッカー選手)ナカータの話題から、マリア・カラスやマイケル・ボルトン(「女心の歌」や「誰も寝てはならぬ」等のオペラ・アリアを歌うロック歌手)の話題まで、ベラベ〜ラベラベ〜ラ。イタリアーナとの会話は(少々疲れたのは事実だが)楽しい。

 彼女が歌ったベッリーニやプッチーニのアリアのアルバムを、次のように酷評したカタブツ・クラシック音楽評論家がいた。 「イタリアにも演歌があったとは!しかも上にドのつく“オペラ・ド演歌”!そもそもオペラがオペラであるための基本的条件、本質的約束事を無視し……」

 そもそもイタリア・オペラってイタリアの演歌でしょ。
 その素晴らしい事実をフィリッパ・ジョルダーノはわかりやすく教えてくれたのだ。

 「21世紀のマリア・カラス」とは明らかに誇大広告だが、彼女のリリースしたCDは、イタリア・オペラ・アリアの絶妙な美しさを堪能できる素晴らしいアルバムだ。Brava!Principessa!

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リヒャルト・シュトラウスのオペラは宝塚にふさわしい

日本人は「万葉集」以来「歌とともに生きている」

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永遠の歌声

「原点回帰」の「山下洋輔ニュー・イヤー・コンサート2006」に贈る新春お笑い寄席 新作古典落語『人生振出双六』

20世紀最高の「歌役者」

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バーブラは諸行無常の響きあり

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