スポーツの秋――近頃は、春の運動会も多くなったうえ、運動会のBGMもロック調の音楽が増え、運動会もかなり様変わりした。
が、昔は(といっても、そんなに古い話ではなく、せいぜい20〜30年前までは)秋の運動会の音楽といえば、ポルカ(ボヘミア地方で生まれた速い2拍子の舞曲)やギャロップ(4分の2拍子の速い輪舞曲)が定番だった。
なかでもヨハン・シュトラウスの『トゥリッチ・トゥラッチ・ポルカ』やカバレフスキーの『道化師のギャロップ』は、たとえタイトルを知らない人でも、聴けば運動会の光景を思い浮かべるほど、運動会と結びついた音楽で、ロック調の曲が多くなった今でもけっこう使われている。
運動会を世界的規模に大きくしたもの――それがオリンピックである……という言い方もでき、そこで用いられるオリジナルの音楽には、名曲が多い。
たとえば1964年東京オリンピックの開閉会式で用いられた古関裕而作曲『東京オリンピック行進曲』は、現代の古典的行進曲の最高傑作といわれている。
また、1984年ロサンゼルス・オリンピックでは『スター・ウォーズ』『E.T.』『スーパーマン』などの映画音楽で有名なジョン・ウィリアムスの作曲した『ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ』が人気を博し、有名になった。
オリンピックには、かつて(1912年第5回ストックホルム大会〜1948年第14回ロンドン大会)芸術競技というものが正式競技として存在し、絵画や彫刻、作曲や演奏などに対しても、金銀銅のメダルが授与されていた。
それは精神活動(芸術)と身体活動(スポーツ)の両者が伴って初めて人間と言えるから……という考えに基づき、古代ギリシャのオリンピックから行われていたものだが、やがて芸術は競い争うものではない、という考えから芸術競技は廃止され、「オリンピック芸術祭」として様々なコンサートや絵画展などが催されることになった。
1998年の長野冬季オリンピックの開会式で指揮者の小沢征爾さんが登場し、世界五大陸(北京・ベルリン・ケープタウン・ニューヨーク・シドニー)の合唱団を衛星回線による映像と音声で結び、ベートーヴェンの『第九交響曲』が演奏されたのも、「オリンピック芸術祭」の一環と言えるのだ。
この原稿が読まれる頃には、2020年のオリンピック開催地も決まっているかもしれないが……そのときは、はたして、どんな芸術祭で、どんな音楽が奏でられるのだろう……? |