子供向けの童話を題材にしたオペラを楽しみます。モーツァルト『バスティアンとバスティエンヌ』やフンパーディンク『ヘンゼルとグレーテル』。モーツァルト『魔笛』と、それを真似たリヒャルト・シュトラウスの『影のない女』。さらにドヴォルザーク『ルサルカ』、ヤナーチェク『利口な女狐の物語』、ナッセン『怪獣たちのいるところ』、ラベル『子供と魔法』など、子供向けの夢と魔法の童話の世界が、オペラになると「大人の世界」に大変身。本当は怖い童話の世界。そんな「大人の童話オペラ」を満喫していただきます。
各回予定
第1回 10月26日 モーツァルト『バスティアンとバスティエンヌ』&ナッセン『怪獣たちのいるところ』
天才児モーツァルトに、オペラで成功させようと思った父親レオポルトは『見てくれの馬鹿娘』を作曲させた。が、大人の恋愛劇は、12歳の少年には荷が重かった。そこで微笑ましい少年と少女の愛の物語に、題材を変更。モーツァルトがオペラ・デビューした子供向け童話のような恋愛劇と現代の童話オペラ『怪獣たちのいるところ』を聴き較べてみる。
第2回 11月30日 モーツァルト『魔笛』
「童話」でオペラ・デビューを果たしたモーツァルトが、死の直前に作曲した最後の大傑作オペラ『魔笛』も「童話オペラ」だった。異国(エジプト?)を舞台にした寓話劇の背後には、秘密結社フリーメイソンの秘儀が隠されているともいわれ、それでモーツァルトは暗殺された、という説もある。童話オペラとはほんとうは怖ろしいものなのか…?
第3回 12月28日 フンパーディンク『ヘンゼルとグレーテル』
世界中の子供たちに愛されているグリム童話を、19世紀末ドイツの作曲家フンパーディンクは、ワーグナーの影響を多大に受けた音楽で、「堂々たる子供向け童話オペラ」に創りあげた。しかし……本当は怖いグリム童話。何しろ幼い二人の兄と妹が、最後に魔女を竈(かまど)で焼き殺すのだから。さて、オペラは、その「怖さ」をどう表現したか…?
第4回 1月25日 ドヴォルザーク『ルサルカ』&ヤナーチェク『利口な女狐の物語』
森の湖に住む妖精ルサルカは人間の王子を愛してしまい、魔法使いに頼んで人間の姿にしてもらう。そして2人は結婚するが…結末に悲劇が待ち受ける。スラヴ神話を元にした寓話をドヴォルザークがオペラ化。そしてヤナーチェクは『利口な女狐の物語』という童話をオペラ化して、現代のエコロジー思想にもつながる「生命の森」の大切さを表現した。
第5回 2月22日 リヒャルト・シュトラウス『影のない女』
モーツァルト『フィガロの結婚』を意識した『ばらの騎士』で大成功したR・シュトラウス。次に『魔笛』のような寓話オペラに挑む。東洋の島国に住む皇后には影がなく(子供を産む能力がなく)、染物屋の女房から影を奪い取ろうとする。しかし……。複雑な大人のメルヘンを、美しい音楽で見事に語り尽くした大傑作童話オペラを味わい尽くす。
第6回 3月22日 ラヴェル『子供と魔法』&プロコフィエフ『3つのオレンジへの恋』
オペラとバレエを融合させた幻想的オペラ『子供と魔法』。勉強せずに母親に叱られた子供が、いたずらばかりしていると、ソファや時計やコーヒーカップが動き出し、教科書から老人が現れ…という可愛い物語。鬱病の王子が様々な冒険の末に王女と結ばれるという寓話オペラ『3つのオレンジへの恋』とともに、現代オペラの最高峰も「童話」なのだ。 |