プラダ、グッチ、フェラガモ…などのイタリア・ブランド。
フェラーリ、アルファロメオ、ランボルギーニ…といったイタリア高級車。
バローロ、バルバレスコ、キャンティ…などのイタリア・ワイン。
各種パスタに生ハム、パルメザンやモツァレーラなどのチーズにバルサミコ酢とオリーヴ油をたっぷり使ったイタメシ。
さらにセリエAのサッカー(カルチョ)、世界遺産に落書きをする不届き者まで出るイタリア旅行…。
と、昨今のイタリア人気は高まるばかり。
なのにイタリア・オペラ(イタオペ)だけはパス…というのはナンセンス。イタオペには、イタリア人の心情、人情、人生、歴史…のすべてが描き出されているのだ。
なかでも大オペラ作家のジュゼッペ・ヴェルディは、19世紀イタリア独立統一運動のシンボルともなった人物で、彼の作品のなかにはイタリア第二の国歌といわれるものまである(オペラ『ナブッコ』の合唱曲『行け、我が思いよ、金色の翼に乗って』)。その歌は、トリノ冬季五輪の閉会式や、映画『ゴッドファーザー・パート3』のなかでも使われた。
では、ヴェルディなんて知らないけれど、イタリアは大好きだから、ちょっとイタオペにも手を出してみたい…と思われた方は、どうすればいいのか?
答えは簡単。まずは『椿姫』を見ればいい。音楽は美しく、ストーリーはわかりやすく、とにかく泣ける!
パリの高級娼婦(ヴィオレッタ=椿姫)に、田舎者(プロヴァンス出身)の青年(アルフレード)が熱烈な恋をする。肺病で余命の短いヴィオレッタは、その真剣な愛を受け入れ、二人は一緒に暮らすようになる。
が、青年の父親(ジョルジョ・ジェルモン)は、娼婦と暮らす息子(兄)の存在が娘(妹)の結婚の妨げとなるため、二人に別れるよう説得する。
ヴィオレッタはその説得を泣く泣く受け入れ、別れる決心をする。が、アルフレードはその行為を裏切りと考え、パリに戻ったヴィオレッタを連れ戻そうとする。その結果、彼女のパトロンの男爵と決闘になり、パリを去る…。
ヴィオレッタの病は進み、一人寂しく死を迎えようとしたとき、ジェルモンが現れ、ヴィオレッタの心を傷つけたことを悔い謝る。逃亡生活を続けていたアルフレードも戻ってくるが、ヴィオレッタは彼の腕に抱かれて天国へ…。
娼婦に身をやつしながらも真の愛を探し求め続けたヴィオレッタ。彼女の懸命な生き方は、ヴェルディの見事な音楽によって、涙なくては見られない最高の傑作ドラマに仕立てられた。
このオペラが初演されたのはヴェニスのフェニーチェ劇場。なぜか何度も火事に見舞われ、その都度「不死鳥」(フェニーチェ)のように甦った劇場は、今世紀に入っても火事から復興。
04年に、主人公のヴィオレッタがスーパーモデルとしてランジェリー姿で絶唱する現代版新演出の『椿姫』で復活した。
また、ヴェルディの生まれ故郷(ブッセート)の小さな劇場でフランコ・ゼッフィレッリが演出した素晴らしく美しい舞台のDVDもある。(以上ナンデモカンデモ参照)
オペラ好きのイタリア人も、近松門左衛門以来の「悲劇」の伝統を持つ日本人も、どちらも「ドラマで涙を流す」ことが大好きな民族。だから日本人はイタリアが好きなのだろう。 |