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10月14日、東京・味の素スタジアムで行われたサッカー日本代表vsブラジル代表の試合で、過去に0勝11敗2引分けと1勝もできなかった日本代表チームが、前半0対2とリードされながら後半に3得点を挙げ、ワールドカップ(W杯)最多優勝5回を誇る"サッカー王国"ブラジル代表チームに勝利した。
親善試合とはいえ、またブラジルがネイマールなどの超スーパースター選手を欠いていたとはいえ、日本も三苫選手など、有力選手を欠いていたこともあり、これは見事な勝利と言っていいだろう。
もちろんこの勝利が、森保監督や日本代表の選手たちが口にする「W杯優勝」という目標に近づいたなどと言えるものでないことは、サッカー・ファンなら誰もがわかっている。
過去のW杯優勝チームは、ブラジルの他、ウルグアイ、アルゼンチン、イタリア、ドイツ(西ドイツ)、イングランド、フランス、スペインのどの国も、FIFA(国際サッカー連盟)ランキングで10位以内だった国ばかり。
日本は19位。ブラジルに勝ったことでランクアップするとは言え、まだまだ優勝可能圏内に位置するとは言えない。
さらに来年の北米3か国(カナダ・アメリカ・メキシコ)でのW杯から、参加国がこれまでの32か国から48か国に増え、グループリーグを勝ちあがると、これまでベスト16だったのがベスト32になる。
ということは、日本代表チームがグループリーグを勝ちあがっても(過去に3度経験)、以前なら優勝までに4試合勝てば良かったのが、来年からは5試合勝たなければならなくなった。
日本代表チームが以前より相当強くなったのは確かで、世界の強豪国(ランク10位以内の国)に勝てる確率が50%〜60%になったとしても、5試合連続して勝てる(優勝できる)確率は3〜5%程度でしかないのだ。
もちろんそれは机上の数字でしかなく、前回のカタールW杯で、ドイツ、スペインの両強豪国を撃破したことを思えば、決して夢物語ではなく、挑戦するに値する手の届く目標と言っていいだろう。
これ以上来年の話題を書くのはやめるが、ここで確認しておきたいのは、サッカーW杯というイベントが、近代スポーツの「平等性」という大原則に則り、誰もが(どの国のチームでも)参加でき、誰にも(どの国のチームにも)世界一(ワールド・チャンピオン)になれる(挑戦できる)というルールで実施されていることだ。
そんなことは当たり前じゃないか、と思う人がいるかもしれない。が、サッカー(フットボール)の歴史を振り返ると、この「平等性」というルールは、それほど簡単なものではないことがわかる。
1863年にイングランドで生まれたフットボール協会(フットボール・アソシエーション=FA)は、1871年に大学や地域対抗のクラブによる「FAカップ争奪選手権」を開始。
1890年代になると参加クラブはイギリス全土で100チームを超えるようになり、そこから現在のプレミアリーグにもつながるプロリーグも生まれた。
そんなイギリスのサッカー界にとって、世界最高の"サッカーの価値"は、サッカー発祥の地であるイングランドの"FAカップ"であり、欧州の各国や南アメリカ、さらに大英帝国の植民地でも盛んになったサッカーをイングランドは支援し、優秀な選手はイングランド(イギリス)のチームに招いて(引き抜いて)活躍させるようになった。
そのような大英帝国中心主義に対して、ヨーロッパのサッカー界が異を唱えはじめ、1904年にフランスが中心になり、ベルギー、オランダ、デンマーク、スウェーデン、スイス、スペインの7か国が国際サッカー連盟(FIFA)を設立。
その後FIFAは、南アフリカ、アルゼンチン、チリ、アメリカ、ユーゴスラビア、ルーマニア、ウルグアイ……と加盟国を増やし続け、1930年にはウルグアイで第1回ワールドカップを開催。
その間も"FAカップ"による"自国中心主義"を貫き続けたイギリスも、第二次世界大戦後の多くの植民地の独立と大英帝国の没落によって、1946年に英国4協会(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)がFIFAに加盟。
それによってワールドカップは、イングランドのFAカップよりも多くの組織(全世界211の国と地域によるサッカー協会がFIFAに加盟)が参加する「平等な大会」へと発展したのだ。
かつてはヨーロッパと南米のサッカー・クラブが対決していたインターコンチネンタルカップ(1960年)も、現在では6大陸のチャンピオン・クラブと開催国のチャンピオンクラブが参加するクラブワールドカップに発展。近代スポーツの原則である「世界中のクラブが参加する平等な大会」となっている。
ここまで読んでこられた読者のなかには、既に気付かれた方も多いだろうが、このような近代スポーツの原則である「平等な世界組織」になっていないのが、アメリカ・メジャーリーグ(MLB)が主導する世界の野球界だ。
サッカー日本代表がブラジルに勝ったのと同じ時期、メジャーリーグではワールドシリーズを目指して、ドジャースの大谷選手や山本・佐々木両投手らが、懸命にプレイしていた。
他にもパドレスのダルビッシュ、松井両投手、カブスの今永投手や鈴木選手……など、多くの日本人選手(日本のプロ野球出身選手)が、ワールドシリーズのチャンピオン(世界一?)を目指して、アメリカの各都市のクラブチームに加わって活躍していた。
MLBはアメリカの組織であり、世界中の国々からアメリカへ選手が集まり、世界最高の素晴らしいベースボール・パフォーマンスを見せる。
が、近代スポーツの平等性の大原則には程遠い、サッカーの歴史で言えば大英帝国が自国中心主義を貫いていた古い時代と同じなのだ。
世界の野球界は、アメリカ中心主義(アメリカ・ファースト)で"発展"する以外に選択肢はなく、FIFAはお手本にはならないのだろうか?
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