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〈講義概要〉 ・プロフェッショナルとしてのスポーツジャーナリズムの実践的方法論を獲得できるよう指導する。
〈講義計画〉
1.スポーツジャーナリズムに携わる人間が最低限知っておくべき「スポーツとは何か?」「スポーツは民主主義社会からしか生まれない」「ジャーナリズムとは何か?」「ジャーナリズムとは批判する精神のことである」ということを解説します。さらにスポーツジャーナリズムに携わる人間が実行すべき”7項目の作業“と、身に付けるべき”サブ能力“についての解説を行います(以下に記す@〜Fは、その7項目の個々の作業のことです)。
2.@スポーツに関する様々な疑問に気付く。我々は「スポーツ」という人類のカルチャー(文化)について、実は知っているようでいて、本当は多くのことを知らないということに気付くことこそ基本中の基本です(スポーツに対する「無知の知」。たとえば大谷選手の所属する"ドジャース"という球団名の"意味”を知っていますか?)。Aスポーツを学び・スポーツを知る方法を解説します。スポーツの「何」を知るべきか? ルール? 選手? 組織? 歴史?……という問題を考えます。
3.Bスポーツをみる(見る・観る・覧る・看る・観察する・見抜く・読み取る)という行為は、どのような行為のことを指すのか? スポーツの「何」を見るのか? スポーツ選手の動きや技術を見るのか? スポーツの勝敗を見る(分析する)のか? スポーツ選手そのもの(人間のドラマ)を見るのか? スポーツの素晴らしさ(醜さ)を見るのか? 「オリンピック(ワールドカップ)を見る」ということは可能か?……といったことを考えながら、アメリカ・メジャーリーグのプロモ−ション・ビデオを見ながら、「みる」という行為をどのように身に付ければいいのかを解説します。
4.市川崑監督の映画『東京オリンピック』(1965年公開)の前半を見て、市川崑監督は「オリンピック」を、また「スポーツ」を、「どのように見たのか?」をみんなで考えます。
5.市川崑監督の映画『東京オリンピック』の後半を見て、市川崑監督は「オリンピック」を、また「スポーツ」を、「どのように見」て、どのように「表現しようと考えたのか?」ということを、みんなで考えます。
6.Cスポーツをきく(聞く・聴く・訊く・聞き出す・引き出す・インタヴューする)という行為を解説します。それは「話を伺う(単に聞く)行為」ではなく、インタヴュアーの「聞きたいこと」を「引き出す」行為です。そのやり方を、過去に小生が実際に行った長嶋茂雄氏へのインタヴューを例にあげて、企画立案、インタヴュー・メモの作成、実際のインタヴュー、速記(録音)の処理、原稿作成……の順に説明します。
7.D「スポーツを想像する」、という行為を、「スポーツを行う」という行為との比較のなかから解説し、「想像する」というジャーナリストとしての最も重要な営みを解説します。たとえば以下のことを想像してみてください。「熱気球に乗っている自分が風に漂ってる自分」「時速300キロのF1マシンに乗っている自分」「大谷投手の投げる時速160キロの速球を打とうとしている自分」「オリンピックのある競技で優勝して表彰台に上がってる自分」……等々を想像する行為を解説します。
8.Eスポーツを表現する(書く・書き表す・撮る・話す・語る…etc.)という行為を、文章の書き方、写真や映像の撮り方、話し方などから解説します。マスメディアの原稿や話し方では「起承転結」は嫌われます。「転結承起」の書き方、話し方を解説したり、一流のカメラマンが被写体にたいて、あるいは自分に対して、どういう行為・行動に出るかという解説をします。
9.レニ・リーフェンシュタールが1936年の「ナチ・オリンピック」とも呼ばれた大会を記録した映画『オリンピア』(民族の祭典・美の祭典)や、クロード・ルルーシュ監督が1968年のフランス・グルノーヴルで行われた冬季オリンピックを記録した映画『白い恋人たち』を見ながら、「スポーツを表現する」という行為を、みんなで考える
10.Fスポーツを「考える」……という行為について解説します。日本のプロ野球や高校野球のあり方、箱根駅伝のあり方、オリンピックやパラリンピックのあり方……等々について、「どういうあり方がベストか?」というテーマで簡単なディスカッションをするなかで、「考える」という行為は、そもそもどういう行為なのかを解説します。また、「考えた」先にある「発表する」という行為のあり方も考えてみます。
11.スポーツを離れた(基本的に無関係な)"サブ能力”が与える”スポーツジャーナリズム”へのパワー(力)について解説し、その有効活用の方法を解説します。小生は、スポーツを見ることも好きですが、クラシック音楽、オペラ、ジャズ、ミュージカル、歌舞伎、演劇、映画鑑賞なども大好きで、それら一見スポーツとは無関係を思える"趣味"が、実は”サブ能力”としてスポーツジャーナリズムと無関係ではなく、如何に重要な点で働いたかということを解説します。
12.“報道"(ジャーナリズム)という行為が生まれたのは、江戸幕府が誕生した直後の大坂夏の陣・冬の陣の頃。米取引の中心地大坂での戦乱で、米相場がどう動いてるかを早く江戸に伝えるべきところから瓦版が生まれたと言われています。それが明治の文明開化で新聞の誕生とともに、スポーツも輸入され、スポーツ報道が生まれます。そのスポーツ報道の"発展"の歴史……を「事件報道」「国策報道」「教育報道」「人間ドラマ報道」という報道歴史と、新聞・ラジオ・雑誌・テレビ・SNS……というメディアの歴史に沿って講義し、未来のスポーツジャーナリズムのあり方について考えます。
13.授業の最終回として、小生が1995年福岡ユニバーシアードを機会に作製したビデオ映像『一瞬の輝き』を見てもらいながら、この映像の作者は、いったい「何」を企んで、このような映像を作成したのかを、考えていただきます。さらに1972年のミュンヘン五輪を、当時最高峰の8人の映画監督が競作した記録映画『時よ止まれ、君は美しい ミュンヘンの17日』を見ながら、みんなでスポーツやオリンピックの意義を考えたいと思います。このときのオリンピックは「黒い九月」というパレスチナ・ゲリラの襲撃を受け、2人のイスラエル選手が射殺され、9人が人質となり、最終的には人質全員と犯人5人、警官1人が死亡する大惨事となりました。この事件は、のちにスティーヴン・スピルバーグが『ミュンヘン』という映画にもしましたが、スポーツという世界的文化(カルチャー)を考える場合、忘れてはならない事件と言えます。
《教科書・参考書》 玉木正之・著『スポーツとは何か』講談社現代新書 ◎玉木正之・著『今こそ「スポーツとは何か?」を考えてみよう』春陽堂書店 多木浩二・著『スポーツを考える――身体・資本・ナショナリズム』ちくま新書 山本敦久・著『ポスト・スポーツの時代』岩波書店 鬼丸正明・坂上康博・著『映像文化論の教科書 運動としての映画 映像としてのスポーツ』青弓社 ヨハン・ホイジンガ・著/高橋秀雄・訳『ホモ・ルーデンス 改版』中公文庫 ロジェ・カイヨワ/多田道太郎・塚崎幹夫・訳『遊びと人間』講談社学術文庫 ◎深代千之・監修/藤子・F・不二雄まんが『ドラえもん科学ワールド スポーツの科学』小学館
以上はスポーツに関するジャーナリストを目指す人なら、すべて読むべき必読本です。他に“必読本"は100冊以上ありますが(笑)、最近の学生は読書量が少ないと聞くなかで、小生の授業を受けた記念に、◎印の2冊くらいは読んでみてください。面白いですよ。
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